「紙の上の仕事」展に向けての考察。

 

−紙に描く−

私は、美術大学時代、油絵学科で絵画を学び、卒業して、作家活動を始めて以来、キャン
バスに油絵具というスタイルで創作活動をしてきました。2011年での個展では、大小含
めてキャンバスに油絵具というス タイルの作品を発表致しました。
それ以降、画家である父に、紙の問屋を教えてもらい、紙に色鉛筆、クレヨン、アクリルと
いったスタイルで、「紙」の上にドローイングするという仕事に変遷しました。
油絵具というのは、化学物質で、自然の循環には適さないという違和感が油絵 制作をして
いるときからあり、自然と水性の素材で描くようになりました。
また、中国の書の作品集を観て、強くインパクトを受けたことも、紙に描くきっかけになりま
した。

近年の制作に当たっては、水性の色鉛筆の黒、クレヨンによる有彩色および黒、黒のアクリ
ル絵具を中心に制作をしています。描かれた絵画は、全てが、具体的なイメージはなく、 直
感に従いオートマチ ックに描かれたドローイングが中心です。色クレヨンによる色彩の要素
と 鉛筆・黒クレヨン・黒のアクリルのそれぞれ違った太さの黒の要素が絡み合い、より複雑な
作品へと展開します。

制作においては、ほとんど無心に短時間で仕上げます。作為的要素が入ると、絵自体が退
屈な作品になってしまうので、出来るだけ直感に従い、スポーツのように創作にあたり、 思
考 といえば、わずかな形と色のバランス感覚の要素だ けです。また、どの時点が完 成かと
いうのも難しく、短時間で決着がつく作品もあれば、何日描いても完成に至らない作品もあり
ます。時間をか け た からといって、完成度が必ずしも高いわけではなく、短時間でも、高い
完成度に至る作品もあり ます。制作において、一番大切にしているのは、最初に紙に色を置
く 時の新鮮さを、どの段階でも保ち続けることです。

私は、大きめの紙の画面の作品を沢山描くので、コスト的にも、技術的にも、現在の「紙に描く」
スタイルが今の自分には適しています。

2013年 春 加藤 K記