加藤Kさんの仕事から連想する有名な画家は大竹伸朗 やストーリートアーティストバンクシー、
ジャン=ミシェル・バスキアなどを思い描くが、少し違うような気がする。 元々、人間の意
識には
困難をたえず乗り越えようとする意味で、「自由であろうとする本性」があるという。
その前提がなっているのは、メタレベルに立ちうる、という人間の意識の能力である。例えば、
自分の性別や年齢のような具体的な規定性に対しても、頭の中でそれを度外視してまったく別
の自分を想像することができる。中々、そう云う人に会う機会はない。彼のように現実のあり
方を否定してメタレベルに立つ能力をヘーゲルは「意識の否定性」と呼ぶらしい。困難に直面
したときも、意識はこの意識の否定性を発揮することで、それを乗り越え、自由になろうとす
るのである。作品から来るイメージの破壊、あるいは創造の過程をドローイングに載せながら、
語るような筆入れで描く、加藤Kさんの絵画は、遠い意識の有り様を何度も何度も鍛練に重ね
て行く。それは自分ら自らの人生を描いているようである 。
鈴木敏春(美術批評/愛知アート・コレクティブ)