自分は、描画方法や支持体に拘りを持ちながら作品制作をしています.まず、自分の作品は支持体の
キャンバス制作から始まります。膠水で目止めした綿布に炭酸カルシウムやチタニウムホワイトな
どを混ぜたエマルジョンを塗り、半油性地エマルジョン地の上から油彩で制作しています。エマル
ジョン地を使用することにより、油彩を塗り重ねると凹凸感のあるマチエールを作り出すことが可
能になります。 絵の構図と色構成を決める際に、選んだ構図から直感で受け取った印象からドロー
イングを制作し、その絵の元になる色構成を決めていきます。 例えば、構図から暖かい印象を受け
た場合は、黄色や赤色を絵の完成形とし、下地には反対色の青色を塗るという構成になります。こ
のように色の層を下から順に変更していくことで、自分の絵は色幅が少しづつ広がっていきます。
油絵の具の『不透明色』『半透明色』『透明色』を層によって使い分けると、色の発色や濃淡が調
整出来ます。赤色、黄色、青色…それぞれが『一つ』ではありません。明るい赤色、暗い赤色、く
すんだ黄色、浮かび上がる青色、輝くような白色…。これらの色を使うことで、自分の絵は完成し
ます。そして、これらの色を意図的に使用するためには、前述した油絵の具の『不透明色』『半透
明色』『透明色』を層によって使い分けることがとても重要なのです。
次に、描いているモチーフの話です。狐を多く描いているのは、狐が自分の中で一番作品に落とし
込みやすい存在だからです。 小さい頃から貴方は狐を多く描いていた、と自分は両親から聞きまし
た。自分の朧気な記憶の中でも狐を描いているので、本当にたくさん狐を描いていたのだろうと思
います。 大学2年生の時、自分の好きなものを描くという課題が出ました。その時まで、自分はあ
まり意識して狐を描いていませんでした。久しぶりにちょっと描いてみようかな、という落書き程
度で筆を持ち、調べた狐の資料をみながら模写をしました。すると、みるみるうちに自分の右手が
油絵の具をキャンバスに乗せる乗せる…。その作品は、その時期に描いた作品の中で一番満足でき
る絵となりました。 あの日から今日まで、自分は狐を描き続けています。それは、筆が、意識が、
色構成が、一番満足出来るからです。これからも、狐を描くと思います。
吉廣希美 |